誰もが認める「歴史的名盤」とは別に、他人の評価は関係なく、自分にとっては理屈抜きに好きなアルバムがある。そういう「私的名盤」をこれから不定期に紹介していこうと思う。

 初回は、豊洲・フジロックをきっかけに知ったTHE MONTROSE AVENUE/「Thirty Days Out」。澄みきったハーモニーと、果てしなく切ないメロディー。それらがグルーヴィーなアメリカン・ウェストコースト・ロックサウンドに彩られることによって、UKギターバンドでも他に類を見ないオリジナリティーを生むことになった。ギター・ベース・ドラム・ピアノ・オルガンのシンプルなバンドサウンドと、叙情感を演出するホーン・ストリングスと言った生音に統一されたことで、ブリットポップが死滅した90年代後半に発表されたという時間軸を忘れて、作品自体のどこか懐かしい魅力にふれる事が出来るのだ。

 そして僕が特に本作を好む理由は、このアルバムを聴いていると「1本のロード・ムーヴィーを観ている様な」イメージを喚起してくれるからだ。ほろ苦い青春を舞台にして、歓喜と挫折と言った様々なシーンが、1曲1曲毎に移り変わって行く。そんな本作を、僕は自分が疲弊して擦り減って来たかなと感じると、時折思い出したかの様にプレイヤーに乗せるのだ。ちょうど今日みたいに、どうにもならない自分自身と夏の暑さにウンザリして来た時季に。だから、僕は「このバンドは作品を発表して行くにつれ、いずれはきっとTEENAGE FANCLUBみたいな存在になる!」と期待していたのだけど…

 本作の他にロード・ムーヴィーのイメージを喚起してくれる作品は、NORTHERN BRIGHT/「Northern Songs」(一人の青年が前向きに成長していく過程を描いた作品)や、PRIMAL SCREAM/「Vanishing Point」(荒廃した雰囲気の中を奇妙なスピード感で走り続ける、まさにロックンロールな作品)があるが、これらのアルバムは決して毎日聴きたくなる種類の作品ではない。しかし、不定期だけど必ず体が欲する時季が訪れる作品であり、僕はこうしたアルバムを手に入れた時こそが、もしかしたら一番充実しているかもしれないと思うのだ。

Thanks For The Inspiration Of…

THE VELVET UNDERGROUND&NICO/「The Velvet Underground」
THE MONTROSE AVENUE/「Thirty Days Out」
PRIMAL SCREAM/「Vanishing Point」(+映画)
OASIS/「Standing On The Shoulder Of Giants」
奥田民生/「29」「30」「股旅」“イージューライダー”
THE BEATLES/「A Hard Day’s Night(ビートルズがやって来る!ヤァ!ヤァ!ヤァ!)」

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