こんなことは言いたくないのさ(Don’t Ask Me Why)

　自分な好きなコト・モノ・ヒトを批判しなきゃいけないのは、当たり前だけどすごくイヤなことだ。でも、それらが悪い状態に陥っているなら指摘するべきだろうし、「好きだからこそ」キツイことを言わなきゃいけない時もあるって僕は思う。
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　先日行われたジャパンサーキットと言うライブ・イベントに、曽我部恵一が参加した。サニーデイサービス解散後、（サポートバンドを従えて）本格的なライブ活動をするのは今回が初めてということで、今後の曽我部の活動を占う意味でも、僕は相当の期待をしていた。しかし…。

　とりあえず、セットリストから。

1．夏
2．テレフォンラブ
3．愛のゆくえ
4．浜辺
5．ギター
6．大人になんかならないで
7．真昼の出来事
8．百年後の世界
en:
1．東京
2．魔法

　「夏」「テレフォンラブ」は昨年末のインストアライブでも披露していた曲で、「ギター」はファーストシングル、「真昼の出来事」はサニーデイの「24時」セッション時のアウトトラック、アンコールの2曲はお馴染みサニーデイ時代の曲という構成だった。

　MCで曽我部が言っていた通りなら、「今やってる曲はそのまんまの音でアルバムに入る」「明後日もレコーディング」「アナログも絶対出す」「部屋で一人でロウソクをつけて聴く感じ」にソロアルバムはなるみたいだ。

　バンド構成もドラム、ベース、パーカッション、サックス、キーボード、エレキギター×2、アコースティックギター（曽我部）ってこともあってか、サニーデイに比べても各段と良い演奏を聴かせていたようだ（まあ、サニーデイがあまりに演奏が下手で有名だったこともあるけど）。

　ここで断っておくけど、さっきから「みたいだ」や「ようだ」という表現を連用しているが文字通りの「伝聞形」で、僕は実際にライブを見たわけじゃない。あくまで事後報告やあちこちの情報で把握しているだけにすぎない。

　だから、もしかして僕には今の曽我部を批判する資格がないかもしれないけど、昨年末からの傾向を踏まえると、やっぱりここで一言物申さずにはいられなくなってしまう。

　現在の曽我部が結婚し、子供を授かってホントに幸せなのは良く分かる。しかし、ファンとして欲を言わせてもらえば、曽我部の実力は誰もが認めるほどなんだから、ソロになって自分の好き勝手に音楽を作っていける環境にあるんだし、本気で最先端の音楽を作る！って気合を見せてほしい。

　現在の日本のロックを牽引する、くるりやスーパーカーやナンバーガールに負けない、新しい音楽を曽我部なら切り開けると僕には思える。例えば、それこそエンケン（遠藤賢司）みたいなアンダーグラウンドポジションにこのまま曽我部が落ち着いてしまうのは、あまりに惜しい気がしてならない。

　「芸のない」新曲群に失望してはいないけど、少なくとも、今の僕じゃ臆面もなく「リン・リン・アイ・ラヴ・ユー・T・E・L・E・P・H・O・N・E・L・O・V・E」とは歌えないなぁってわけだ（これはこれで好きなんだけどさ・苦笑）。

　ただ曲が…要するに「ダサイ」気がしてしまう。あくまで個人的にだけど、サニーデイの時はアルバムタイトルひとつ取っても、「MUGEN」や「LOVE ALBUM」とか、「ダサイ」とはスレスレの位置でカッコ良さを感じられたけど、何というか、そういう魔法が色褪せてしまったのかもしれない。多分、曽我部がピチカートファイブに対して思っていたのと同じ感覚なのだろうけど…「あー、もうピークを過ぎたんだなぁ」って感覚。

　イヤ、実際そうでしょう？「24時」「MUGEN」「LOVE ALBUM」をちゃんと聴きてきたなら、今の曽我部をもろ手を上げて絶賛できないはず。確かに「ギター」は良い曲だし、僕も好きな曲ではあるけど、「まだまだこんなはずじゃないだろう？」って気にもなるのも否定できないわけで。

　ジョンレノンみたいにプライヴェート感覚の音楽性へと移行したくなのも分からなくはない。だけど、「ギター」に関しても、「まったくしょうがねーよなぁ、曽我部のヤローは…まあ、ヤツらしいけど」的な予定調和の上に甘んじてしまっているのは否定できないはずだ。

　極端な言い方かもしれないけど、「ギター」を聴いてみて正直「これを聴いて曽我部を好きになった！サニーデイサービスってどんなバンド？」って人いないだろう。

　自分が曽我部の音楽についていけなくなって、知らないうちに良いところを探しちゃうような状態にだけはなりたくない。

　まだソロ活動を始めたばかりだし、この段階で評価を下すべきじゃないだろうけど、期待が大きい分、それに比例して裏切られたくないという思いも強くなってしまう。でも、アルバムが出たら即買いしてしまうんだろうけどさ。